不動産の売却価格の決め方|相場より高く売るための戦略

不動産を売るとき、最初に悩むのが売出価格です。高く売りたい気持ちが先に立って相場から離れた価格を付けると、問い合わせが入らず、売却期間だけが延びてしまうことがあります。反対に、早く売りたいからと安く出しすぎれば、本来残せたはずのお金を逃しかねません。

売却価格は、売主の希望だけで決まるものではありません。周辺の成約事例、現在の競合物件、建物の状態、住宅ローンの残債、売却期限まで含めて組み立てる必要があります。

相場より高く売るには、ただ強気の価格で出せばよいわけではありません。買主が納得できる根拠を用意し、売り出し直後の反響を見ながら、価格と販売方法を調整していくことが大切です。

目次

査定価格と売出価格は別物

不動産会社に査定を依頼すると、査定価格が提示されます。ただし、その金額がそのまま売出価格になるわけではありません。

査定価格は、不動産会社が周辺の成約事例や市場動向、物件の状態をもとに算出する価格です。売れる可能性が高いと考えられる目安であり、必ずその金額で売れる保証ではありません。

売出価格は、実際に市場へ公開する価格です。査定価格を参考にしながら、最終的には売主が決めます。早く売りたいのか、時間をかけて高値を狙うのか、値引き交渉を見込むのかによって設定は変わります。

たとえば査定価格が3,000万円でも、売却期限に余裕があれば3,180万円から出すことがあります。反対に、住み替え先の購入期限が迫っているなら、2,980万円で反響を取りにいく判断もあります。大切なのは、査定価格、売出価格、成約予想価格を分けて考えることです。

不動産価格は何で決まるのか

不動産価格は、築年数だけで決まりません。買主がその物件を選ぶ理由と、選ばない理由が価格に反映されます。

立地条件

価格に強く影響するのは立地です。駅までの距離、通勤や通学のしやすさ、買い物施設や医療機関の近さ、学区、周辺の治安、再開発の有無などが見られます。

同じ市区町村でも、駅近とバス便エリアでは買主層が変わります。坂道が多い地域、道路が狭い地域、人口減少が進む地域では、価格が伸びにくいこともあります。

ただし、駅から遠いから売れないとは限りません。駐車場が取りやすい、土地が広い、静かな住環境を求める層に合うなど、別の魅力があれば価格の支えになります。

築年数と建物の状態

建物は築年数が進むほど評価が下がりやすくなります。特に戸建てでは、築年数が古いと建物価格より土地価格を中心に見られることがあります。

一方で、外壁塗装、屋根の補修、水回りの交換、耐震補強などの履歴がある物件は、買主に安心感を与えます。リフォーム済みでなくても、定期的に手入れされていることが分かれば、内覧時の印象は変わります。

マンションの場合は、専有部分だけでなく管理状態も価格に関わります。管理組合の運営、修繕積立金の額、長期修繕計画、共用部の清掃状態、大規模修繕の履歴は、買主が確認するポイントです。

周辺の成約事例

価格を決めるうえで特に参考になるのは、近い条件の成約事例です。現在売り出されている物件も参考にはなりますが、売出価格は売主の希望価格です。実際にその金額で売れたとは限りません。

成約事例を見るときは、エリア、駅距離、面積、築年数、階数、方角、土地形状、道路付けなどをできるだけそろえます。似ていない事例を都合よく拾うと、価格設定を誤ります。

国土交通省の不動産情報ライブラリでは、不動産の取引価格、地価公示、都道府県地価調査などを確認できます。査定前に見ておくと、不動産会社の説明が妥当か判断しやすくなります。

相場より高く売るための価格戦略

相場より高く売るには、最初の価格設定が大きな分かれ目になります。売り出し直後は、新着物件として購入希望者の目に入りやすい時期です。ここで反響が取れないと、その後の販売活動が苦しくなります。

高値を狙う場合でも、相場から大きく外した価格は避けたほうがよいでしょう。買主はポータルサイトで周辺物件を比較しています。条件が近い物件より明らかに高ければ、内覧候補から外されやすくなります。

現実的には、次の3つの価格を決めておくと動きやすくなります。

  • 希望価格
  • 売れそうな中心価格
  • 最低限譲れない価格

希望価格は、最初に売り出す価格です。中心価格は、反響や内覧数を見ながら成約を狙う価格です。最低ラインは、ローン残債や住み替え費用を踏まえて、これ以下では売らないと決める価格です。

この3つを持たずに売り出すと、値下げ交渉を受けたときに判断がぶれます。売却前に手残り額まで計算しておくと、価格交渉にも落ち着いて対応できます。

高すぎる売出価格のリスク

高く売りたいからといって、相場とかけ離れた価格で出すと逆効果になることがあります。

売却期間が長くなると、買主からは売れ残っている物件に見えやすくなります。長期間掲載されている物件は、値下げ待ちの対象になったり、何か理由があるのではないかと見られたりします。

問い合わせが少ないまま時間が過ぎると、不動産会社の販売意欲も落ちやすくなります。結果として、最初から適正価格で出した場合より大きな値下げが必要になることもあります。

高値を狙うなら、売り出しから2週間、1か月、3か月といった区切りで反響を確認します。閲覧数はあるのに問い合わせがないのか、問い合わせはあるのに内覧につながらないのか、内覧はあるのに申し込みが入らないのか。止まっている場所によって、見直すべき点は変わります。

複数の不動産会社へ査定を依頼する

不動産会社によって査定額は変わります。得意なエリア、買主のネットワーク、販売方法、過去の成約実績が違うからです。

大手の仲介会社は広い集客力を持っています。地域密着型の会社は、近隣の買主や地元の事情に詳しいことがあります。マンション売却に強い会社、戸建てに強い会社、投資用不動産に強い会社もあります。

複数社へ査定を依頼すると、価格の幅が見えてきます。ただし、最も高い査定額を出した会社がよいとは限りません。媒介契約を取るために、根拠の薄い高値を提示するケースもあります。

確認すべきなのは、査定額そのものより根拠です。どの成約事例を使ったのか、競合物件をどう見ているのか、どの買主層に売るつもりなのか、どのくらいの期間で成約を狙うのか。ここまで説明できる会社なら、売却中の判断も任せやすくなります。

内覧対策で価格の納得感を高める

買主は、内覧で価格に見合う物件かどうかを確認します。資料上の条件が良くても、室内が暗い、生活感が強い、水回りに汚れが目立つ、ニオイが残っていると、価格交渉の材料になりやすくなります。

内覧前に整えたいのは、次のような部分です。

  • 玄関の清潔感
  • 室内の明るさ
  • 水回りの汚れ
  • ニオイ
  • 収納の見え方
  • バルコニーや庭の状態

大がかりなリフォームをしなくても、不要なものを減らし、照明を整え、水回りをきれいにするだけで印象は変わります。居住中の物件では、買主が暮らしを想像できる余白を作ることが大切です。

戸建てなら外観や庭、マンションなら共用部から玄関までの印象も見られます。室内だけを整えるのではなく、買主が物件に着いてから帰るまでの流れを意識しておくと、価格への納得感を作りやすくなります。

売却時期も価格に影響する

不動産は、時期によって購入希望者の動きが変わります。住み替え、転勤、入学に合わせて探す人が増える時期は、内覧の機会を作りやすくなります。1月から3月、9月から10月は動きが出やすい時期として意識されることがあります。

ただし、時期だけで高く売れるわけではありません。金利、住宅ローン審査の通りやすさ、エリアの供給数、周辺の競合物件によって結果は変わります。

売却時期を考えるなら、いつ出すかだけでなく、いつまでに売る必要があるかを先に決めます。住み替え先の購入、相続手続き、住宅ローン完済、税金の申告時期などを踏まえて、余裕のある販売期間を取ったほうが価格交渉で不利になりにくくなります。

媒介契約と囲い込みにも注意する

不動産会社へ売却を依頼するときは、媒介契約を結びます。媒介契約には、一般媒介、専任媒介、専属専任媒介があります。

専任媒介と専属専任媒介では、指定流通機構であるレインズへの登録義務があります。専任媒介は契約締結の翌日から7営業日以内、専属専任媒介は5営業日以内に登録するルールです。登録後は、売主に登録証明書が交付されます。

囲い込みとは、売却を依頼された不動産会社が、自社で買主も見つけようとして、他社からの紹介を受けにくくするような行為を指します。買主に広く情報が届かなければ、内覧機会が減り、結果として売却期間が延びたり、価格が下がったりするおそれがあります。

売主として確認したいのは、レインズへの登録状況、販売図面の内容、ポータルサイトへの掲載状況、他社からの問い合わせへの対応です。専任媒介や専属専任媒介では、販売活動の報告も受けられます。報告内容が曖昧な場合は、何件問い合わせがあったのか、内覧につながらない理由は何かを具体的に聞きましょう。

高く売ることと早く売ることのバランス

不動産売却では、高値売却と早期売却を同時に最大化するのは簡単ではありません。高く出せば買主が絞られ、早く売ろうとすれば価格調整が必要になることがあります。

だからこそ、価格を決める前に売却の優先順位を整理しておく必要があります。

いつまでに売りたいのか。住宅ローンはいくら残っているのか。売却後にいくら手元へ残したいのか。住み替え先の購入資金に充てるのか、相続人で分けるのか、投資用不動産の整理なのか。

目的が違えば、正しい価格も変わります。時間に余裕があるなら、少し高めに出して反響を見ながら調整する方法があります。期限が決まっているなら、競合物件より選ばれやすい価格で早めに買主をつかむほうがよい場合もあります。

売却価格を決める前に手残り額も確認する

売却価格を考えるときは、手元に残るお金まで見ておきましょう。売却代金からは、仲介手数料、印紙税、登記費用、住宅ローン残債、譲渡所得税などが差し引かれます。

仲介手数料は、売買価格が400万円を超える場合、売却価格の3%に6万円を加え、そこに消費税を足した金額が上限の目安です。住宅ローンが残っている場合は、売却時に完済し、抵当権を抹消する必要があります。

売却で利益が出る場合は、譲渡所得税がかかることもあります。購入価格や購入時の諸費用、売却時の費用、所有期間によって税額は変わります。査定価格だけで判断せず、売却後にいくら残るかを計算しておくと、値下げ交渉に応じられる範囲も見えやすくなります。

不動産の売却価格は根拠を持って決める

不動産の売却価格は、高く付ければ高く売れるというものではありません。買主が比較する周辺物件、過去の成約事例、物件の状態、売却期限を踏まえ、納得できる価格にする必要があります。

相場より高く売りたいなら、根拠のある価格設定、内覧前の準備、販売力のある不動産会社選びが欠かせません。査定額の高さだけで選ぶのではなく、その価格で売るために何をするのかまで確認しましょう。

売却活動では、最初の反響が大きなヒントになります。問い合わせが少なければ価格や見せ方を見直し、内覧後に申し込みが入らなければ室内の印象や条件面を確認する。こうした調整を重ねることで、安易な値下げを避けながら成約に近づけます。

不動産売却で目指すべきなのは、ただ高い価格を掲げることではありません。買主に選ばれる状態を作り、売主が納得できる手残り額を確保することです。

参考元
国土交通省「不動産情報ライブラリ」
https://www.reinfolib.mlit.go.jp/

国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000268.html

国土交通省「不動産流通の円滑化について」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000268.html

国税庁「譲渡所得の計算のしかた」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm

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この記事を書いた人

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