投資用マンションを売却するベストな時期と手元に残るお金の考え方

投資用マンションを売るかどうか迷うとき、査定価格だけを見ても判断しきれません。高く売れそうに見えても、ローン残債、税金、仲介手数料、抵当権抹消の費用などを差し引くと、手元に残る金額が思ったより少なくなることがあります。

反対に、売却価格だけを見ると大きな利益が出ないように見えても、今後の空室リスクや修繕費、金利上昇を避けられるなら、売却したほうが資金計画を立てやすくなる場合もあります。

投資用マンションの売却で見るべきなのは、いくらで売れるかだけではありません。いつ売るか、ローンを完済できるか、税金を差し引いたあとにいくら残るか。この3つを並べて考えることで、売却するべき時期が見えやすくなります。

目次

投資用マンションを売却する主なタイミング

不動産価格が上がっているとき

不動産価格が上がっている局面では、投資用マンションの売却を検討しやすくなります。購入時より高い価格で売れれば、家賃収入に加えて売却益も得られるためです。

不動産価格は、金利、景気、エリアの賃貸需要、人口動向、再開発、周辺の取引事例などの影響を受けます。都心部や駅近エリアでは、投資家からの需要が集まりやすく、利回りが多少下がっても物件価格が維持されることがあります。

ただし、市場の天井を正確に読むことはできません。もう少し待てばさらに高く売れると思っているうちに、金利上昇や融資姿勢の変化で買主が減ることもあります。売却益が見込める段階で一度手残り額を試算し、保有を続けた場合の収支と比べておくと判断しやすくなります。

大規模修繕や修繕積立金の増額前

マンションでは、長期修繕計画に沿って外壁、屋上防水、給排水設備、共用部などの修繕が行われます。築年数が進むと修繕費の負担が増えやすく、修繕積立金の増額や一時金の徴収が検討されることもあります。

投資用マンションの買主は、物件価格だけでなく、管理費と修繕積立金を差し引いた実質利回りを見ます。月々の固定費が上がれば、同じ家賃でも収益性は下がります。修繕積立金の増額が予定されている物件では、買主が価格交渉をしてくる可能性もあります。

大規模修繕の直前に必ず売るべきというわけではありません。修繕後に建物の印象が良くなり、売却しやすくなるケースもあります。ただ、今後の修繕計画と積立金の見直し予定を知らないまま売却時期を決めると、手残り額の見込みがずれやすくなります。

空室になる前後

投資用マンションは、賃貸中か空室かで買主の見え方が変わります。

賃貸中の物件は、オーナーチェンジ物件として売却します。買主は購入後すぐに家賃収入を得られるため、投資家にとって収支を判断しやすい物件になります。長く入居している借主がいて、家賃滞納がなく、管理状態も安定している物件なら、収益物件として評価されやすくなります。

一方で、賃貸中の物件は自分で住みたい買主には売りにくくなります。室内を自由に確認できない場合もあり、内装状態が分かりにくい点は価格交渉の材料になりやすいところです。

空室であれば、投資家だけでなく、自宅用として探している買主にも見てもらえる可能性があります。特にファミリータイプや実需需要のあるエリアでは、空室のほうが売却価格にプラスに働くこともあります。室内を見せやすく、リフォーム後の使い方も想像してもらいやすいからです。

ただし、空室期間が長くなると家賃収入が止まります。管理費、修繕積立金、固定資産税、ローン返済は続くため、空室にして売るなら販売期間と価格設定を慎重に決める必要があります。

所有期間5年超は税金の分かれ目になる

投資用マンションの売却で見落としやすいのが、所有期間による税率の違いです。

土地や建物を売って利益が出た場合、その利益は譲渡所得として扱われます。国税庁の説明では、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかによって、長期譲渡所得と短期譲渡所得に分かれます。

区分判定税率
短期譲渡所得譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年以下所得税30%、住民税9%、復興特別所得税を含めて39.63%
長期譲渡所得譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年超所得税15%、住民税5%、復興特別所得税を含めて20.315%

ここで注意したいのは、実際の売却日ではなく、売却した年の1月1日時点で判定されることです。

たとえば、2021年6月に購入した投資用マンションを2026年7月に売却した場合、購入から実際には5年を超えています。ところが、2026年1月1日時点では所有期間が5年以下のため、短期譲渡所得として扱われます。長期譲渡所得になるのは、2027年1月1日時点で5年を超えてから売却する場合です。

売却益が大きい物件では、この差が手残り額に響きます。売却時期を数か月ずらせるなら、長期譲渡所得に切り替わるタイミングを確認してから動いたほうがよいでしょう。

手元に残るお金は売却価格から逆算する

投資用マンションの売却では、売却価格がそのまま利益になるわけではありません。手元に残る金額は、次の流れで考えます。

手残り額 = 売却価格 − ローン残債 − 売却費用 − 税金

この計算をせずに査定価格だけを見ると、売却後の資金計画が崩れやすくなります。特にローン残債が多い物件や、保有中に減価償却を進めてきた物件では、想定より手残りが少なくなることがあります。

確認する項目は次のとおりです。

  • 売却予想価格
  • ローン残債
  • 仲介手数料
  • 抵当権抹消費用
  • 繰上返済手数料
  • 印紙税
  • 譲渡所得税と住民税
  • 賃貸管理会社への解約費用や精算金

家賃や敷金の精算も忘れやすい部分です。オーナーチェンジで売却する場合、引渡し時点で日割り家賃を精算したり、預かっている敷金を買主へ引き継いだりします。売却代金だけでなく、決済時に動くお金まで見ておく必要があります。

売却時にかかる主な費用

仲介手数料

不動産会社へ仲介を依頼して成約した場合、仲介手数料がかかります。売買価格が400万円を超える場合、上限額は次の速算式で計算されます。

仲介手数料の上限 = 売却価格 × 3% + 6万円 + 消費税

たとえば2,000万円で売却した場合、税抜の上限は66万円です。ここに消費税が加わります。売却価格が高くなるほど仲介手数料も増えるため、手残り額の試算では最初から見込んでおきましょう。

ローン完済と抵当権抹消の費用

ローンが残っている投資用マンションでも売却は可能です。ただし、引渡しまでにローンを完済し、金融機関の抵当権を抹消する必要があります。

売却代金でローンを完済できるなら、決済日に買主から受け取った代金を使って返済し、同時に抵当権抹消の手続きを進めます。金融機関によっては繰上返済手数料がかかるため、ローン残高証明だけでなく、完済時の手数料も確認しておく必要があります。

抵当権抹消登記は司法書士に依頼することが多く、登録免許税や司法書士報酬が発生します。大きな金額ではない場合もありますが、決済時の支払い項目として忘れずに入れておきたい費用です。

譲渡所得税

売却によって利益が出た場合は、譲渡所得に対して税金がかかります。国税庁では、土地や建物の譲渡所得を次のように計算します。

譲渡所得 = 譲渡価額 − 取得費 − 譲渡費用

取得費には、購入代金や購入時の仲介手数料、設備費、改良費などが含まれます。ただし、建物部分は所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。

投資用マンションでは、毎年の確定申告で建物部分の減価償却をしていることが多く、購入時の金額をそのまま取得費にできません。保有期間が長くなるほど建物の取得費が下がり、売却益が大きく計算されることがあります。

ここを見落とすと、売却後に思ったより税金がかかります。特に購入時の契約書、諸費用の領収書、減価償却の明細が手元にあるかどうかで試算の精度が変わります。資料が足りない場合は、早めに税理士へ確認したほうが安心です。

オーバーローンの場合は売却前に資金準備が必要

売却価格よりローン残債のほうが多い状態を、オーバーローンといいます。

たとえば、売却価格が1,800万円、ローン残債が2,000万円なら、差額の200万円を自己資金で補わなければローンを完済できません。実際には、ここに仲介手数料や登記費用なども加わるため、必要な自己資金はさらに増えます。

オーバーローンのまま売却を進める場合、金融機関との調整が必要になることもあります。査定価格だけを見て売却活動を始めるのではなく、ローン残債、売却費用、自己資金を並べて確認しておきましょう。

売るか持ち続けるかは今後の収益で決める

投資用マンションは、今の価格だけでなく、これからの収益も含めて判断する必要があります。

今後、家賃下落、空室期間の長期化、修繕積立金の増額、管理費の上昇、設備交換、金利上昇が見込まれるなら、早めに売却したほうが手残りを守りやすいことがあります。特にワンルームマンションでは、家賃が数千円下がるだけでも年間収支に影響します。

一方で、駅近で賃貸需要が安定している物件や、再開発によってエリアの評価が上がる可能性がある物件なら、保有を続ける選択肢もあります。家賃収入が安定し、ローン返済が進むほど、将来売却したときの手残りが増えることもあるからです。

判断するときは、売却した場合の手残り額と、保有を続けた場合の年間収支を比べます。手元資金を増やしたいのか、毎月のキャッシュフローを残したいのか、赤字リスクを減らしたいのかによって、選ぶべきタイミングは変わります。

まず確認したいのは手残り額

投資用マンションを売却するなら、最初に見るべき数字は査定価格ではなく手残り額です。

査定価格が高くても、ローン残債が多く、譲渡所得税もかかるなら、手元に残る金額は限られます。反対に、売却価格がそれほど高くなくても、ローン返済が進んでいて税負担が小さければ、資金をきれいに回収できることがあります。

売却前に確認したい項目は、次の4つです。

  • いくらで売れそうか
  • ローンはいくら残っているか
  • 売却費用はいくらかかるか
  • 税金を差し引くといくら残るか

投資用マンションは、居住用不動産よりも税金と収支の見方が複雑です。減価償却、譲渡所得、所有期間の判定、ローン完済、賃貸借契約の引き継ぎまで確認しておくと、売却後の後悔を減らせます。

売却のタイミングは、価格が高いときだけで決まるものではありません。税率が変わる時期、修繕費が増える前、空室リスクが高まる前、ローン残債を無理なく消せる時期。これらを重ねて見たとき、手元にいくら残るかが判断の軸になります。

参考元
国税庁「譲渡所得の計算のしかた」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm

国税庁「長期譲渡所得の税額の計算」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm

国税庁「短期譲渡所得の税額の計算」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm

国税庁「取得費となるもの」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3252.htm

国税庁「譲渡費用となるもの」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3255.htm国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000268.html

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この記事を書いた人

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