近年の不動産市場では、金利上昇への関心が高まっています。
これまで日本では低金利環境が長く続いてきましたが、金融政策の変化により住宅ローンや不動産投資ローンの金利動向が注目されるようになりました。
その影響から、金利が上がると不動産価格は下がるのか、売却するなら今のほうがよいのか、マンションと戸建てでは影響に違いがあるのかと疑問を持つ人も増えています。
不動産市場と金利には深い関係があります。住宅を購入する人の多くは住宅ローンを利用するため、金利の変化は購入予算や市場の需要に影響を与えます。
ただし、金利が上昇したからといって不動産価格がすぐに大きく下落するわけではありません。
ここでは、金利上昇が不動産価格へ与える影響や売却市場の変化、今後の見通しについて解説します。
なぜ金利が不動産価格に影響するのか
不動産購入では、多くの人が住宅ローンや不動産投資ローンを利用します。
購入できる価格帯は年収だけで決まるわけではなく、毎月どれだけ返済できるかによっても左右されます。
たとえば、35年返済で毎月12万5,000円を返済する場合、金利によって借入可能額は大きく変わります。
- 金利0.5%の場合 約4,870万円
- 金利1.5%の場合 約4,150万円
同じ返済額でも借入可能額には差が生じます。
購入希望者の予算が縮小すると、高額な物件ほど購入対象から外れやすくなります。これが不動産価格に影響を与える理由の一つです。
金利が上がると毎月の返済負担は増える
仮に4,000万円を35年ローンで借りる場合、金利が上昇すると毎月の返済額や総返済額は増加します。
同じ価格の物件でも負担が重くなるため、購入希望者は予算の見直しを行います。
その結果、これまでより価格の低い物件を探したり、購入時期を先送りしたり、住宅購入を見送って賃貸住宅に住み続けたりする人が増える可能性があります。
こうした動きが不動産需要の減少につながります。
不動産価格は需要と供給で決まる
不動産価格は建物や土地そのものの価値だけで決まるものではありません。
市場でどれだけ購入希望者がいるかも大きな要素になります。
金利上昇によって購入できる人が減れば、需要が弱まり、価格に下落圧力がかかる可能性があります。
一方で、需要が維持されているエリアや物件では、金利上昇の影響が限定的な場合もあります。
売却を検討している人が増える一方で、購入希望者が減少すると、市場全体の需給バランスが変化し、売却までの期間が長くなるケースも考えられます。
金利上昇の影響を受けやすい不動産
金利の影響はすべての不動産で同じではありません。
特に影響を受けやすい物件には共通点があります。
高価格帯マンション
都心の高級マンションやタワーマンション、高価格帯の新築マンションは金利上昇の影響を受けやすい傾向があります。
購入価格が高いほど借入額も大きくなるため、わずかな金利差でも返済負担が増えやすくなります。
購入できる人の数が減ると、価格調整が起きる可能性もあります。
投資用不動産
投資用不動産も金利の影響を受けやすい分野です。
投資家は利回りやキャッシュフローを重視するため、借入金利が上昇すると収益性が低下します。
融資条件が厳しくなれば投資需要が弱まり、購入希望者が減少する可能性があります。
金利上昇の影響を受けにくい不動産
一方で、金利が上昇しても比較的需要が維持されやすい不動産もあります。
人気エリアの物件
駅に近い物件や都心部、再開発エリアなどは需要が根強い傾向があります。
購入希望者が多いエリアでは、多少金利が上昇しても一定の需要が残りやすく、価格が大きく崩れにくい場合があります。
実需が強い地域
人口流入が続いている地域や生活利便性の高い地域では、住宅需要が安定していることがあります。
こうしたエリアでは金利上昇の影響が比較的小さいケースも見られます。
金利上昇で不動産価格はすぐ下がるのか
金利が上がると不動産価格が必ず下落すると考えられがちですが、市場はそれほど単純ではありません。
不動産価格は金利だけで決まるものではなく、景気の動向や人口の変化、建築コスト、需要と供給のバランス、投資需要など、さまざまな要因が重なって決まります。
そのため、金利が上昇したからといって、すべての地域や物件で価格が下落するとは限りません。
建築費の上昇も価格を支えている
近年は建築資材価格や人件費の上昇が続いています。
新築住宅の価格が上昇すると、中古住宅との価格差が縮まり、中古市場の価格が支えられることがあります。
そのため、金利上昇による下落要因だけでなく、価格を維持する要因も同時に存在しています。
今は売り時なのか
不動産を売却するべきタイミングは、物件の条件や所有者の状況によって異なります。
金利上昇だけを理由に判断するのではなく、市場環境や将来の見通しも含めて考えることが重要です。
早めの売却を検討したいケース
人口減少が進む地域の物件や築年数が古い物件、郊外にある住宅、空き家、修繕費の負担が大きい物件は、今後の需要や維持費を考慮すると、早めの売却を検討する選択肢があります。
急いで売る必要がないケース
一方で、人気エリアにある物件や駅から近い物件、築浅住宅、希少性の高い不動産は需要が維持されやすく、価格も比較的安定しやすい傾向があります。
そのため、価格を下げて急いで売却する必要がない場合もあります。
住宅ローン残債も確認しておく
売却を検討する際は、住宅ローンの残債も確認しておきましょう。
売却価格よりローン残高が多い場合は、差額を自己資金で補う必要が生じることがあります。
売却価格だけでなく、手元に残る金額まで含めて計画を立てることが重要です。
売却にかかる諸費用も考慮しながら資金計画を立てておくと、売却後の負担を把握しやすくなります。
金利上昇局面では価格設定が重要
市場が慎重になりやすい局面では、価格設定が売却結果を左右します。
相場より高い価格で売り出すと問い合わせが集まりにくくなり、売却期間が長引いたり、値下げ交渉を受けたりする状況になりやすくなります。
反対に、市場の状況を踏まえた価格設定であれば、買主を見つけやすくなる可能性があります。
売却前には成約事例や周辺相場を確認しながら価格を検討することが大切です。
不動産会社選びも売却結果に影響する
金利上昇局面では、不動産会社の市場分析力や販売戦略がより重要になります。
地域の相場や需要動向を把握している会社であれば、現実的な価格設定や売却計画を提案しやすくなります。
査定額の高さだけで判断するのではなく、売却根拠や販売戦略まで確認したうえで依頼先を選びましょう。
金利上昇時代は市場の変化を見ながら判断することが大切
金利上昇は不動産市場へ一定の影響を与える可能性があります。
購入者の借入負担が増えれば需要が弱まり、価格に下落圧力がかかる場面も考えられます。
ただし、不動産価格はエリアや物件種別、築年数、需給バランスなどによって大きく異なります。
そのため、「必ず価格が下がる」「今すぐ売却すべき」と一律に判断することはできません。
まずは現在の市場価格を把握し、自分の不動産がどのような評価を受けているのか確認することが重要です。
売却を検討している場合は、複数の不動産会社へ査定を依頼し、市場動向や売却戦略を比較しながら判断していくとよいでしょう。
